よくいただくお母さまのお悩みの声です。
- 自分の気に入らないことがあると、私を叩いてきたりします。(1歳8か月)
- 棒が好きで、持つとすぐに振り回します。(1歳6か月)
- 「イヤ!」と言うことをなかなか聞いてくれません。(2歳)
こういった時には強い口調で注意したり責めるといった「叱る」ことをしてしまいがちです。
自我や社会性の十分発達していない小さなお子様に「叱る」のではなく、上手に声掛けをして、とった言動がよくないことを理解してもらうことが大切です。
こうした時、どうやって注意や声掛けをしたらいいのか、私たちの心がけていることをお伝えしたいと思います。
年齢に応じて変わる理解のレベル
お子様の年齢や発達段階によって、言われた内容をどれぐらい理解できているのかは大きく違います。
0~1歳前後のころは、言語能力が十分発達していないため、お母さまの態度や表情から
「これはやってはいけない」
ということだけを理解します。
1~2歳ごろには、言語能力が発達して、何について言われているのかを少しずつ理解しはじめます。
そして、3~4歳ごろになると、個人差は大きいものの、なぜ言われているのか理解できるとともに、その時のお母さまの気持ちも理解しはじめます。
こういったことを頭に入れておくと、イライラする気持ちが収まり、注意や声掛けのしかたも変わってくることと思います。
やめさせなければいけない行動
お子様の気になる行動には理由があります。
モノを持ってから投げたり振り回すことは、お子様が無意識でその活動に必要な調整能力を発達させようとしているのかもしれません。
じっと立ち止まって、動かないのは、気になる小さなものを見つけて観察しているのかもしれません。
お子様の活動のペースをなるべく大切にしてあげていただければと思います。
ただし、次のような場合は、やめさせなければいけません。
そして、してはいけない理由をきちんと伝えてください。
①他の人を傷つける
お友達と遊ぶ中で、叩いたり、蹴ったりという暴力的な行為や、悪口を言ったり、仲間はずれにするなど言葉や態度で他人を傷つける場合です。
相手が嫌がっていることや、痛い思いをしているということをしっかりと伝えるようにしましょう。
②他の人の迷惑になる行動
わがまま、無作法、乱暴、無秩序な行動や、周りの迷惑になるなど集団の害になる行動をとった場合に、これを止めさせる必要があります。
だめな行動を明確にして、何がだめなのかしっかり伝えましょう。
何回も繰り返すかもしれませんが、辛抱強く接していく中でそういった行動はなくなっていくことと思います。
③危険な行動
体が発達してくると、思いがけない行動をしがちですが、時には突然道に飛び出すなど命に関わる場合があります。
行動を止めさせるとともに、どんなことが起こる可能性があるのかしっかり伝えましょう。
危険なことに対して注意されることで、子供はいろいろな危険を学んでいきます。
伝え方で気をつけたいこと
お子様にきちんと伝えるために、私たちは次のようなことに気をつけています。
①感情的にならない(怒らない)
感情的になると、お子さまの中で
「怖い!」
という気持ちが先行してしまい、伝えたい内容がお子さまに伝わりづらくなるので、冷静に伝えるように心がけています。
そうはいってもどうしても感情が高ぶってしまった場合は、一呼吸おいたり、伝える場所を変えて、伝えるようにしています。
②厳しい口調で言わない
一時的には言うことを聞くかもしれませんが、お子さまは恐怖を感じて言うことを聞いているだけです。
「どうして何をしてはいけなかったのか」
というポイントを理解できるように、丁寧な言葉で伝えることを心がけています。
③長く言わない
子供は最後まで集中して聞くことができません。
してはいけない理由が分からなくなってしまいます。
短く簡潔に、「どうして何がいけないことなのか」を分かりやすく伝えるようにしています。
⓸傷つけるような言い方をしない
子供は、親から認めてもらえないと、
「自分は大切にされていない」
と感じるようになり、自己肯定感が低くなってしまいます。
「そんな子に育てた覚えはない!」
「ダメね!」
など人格を否定することは絶対にやめましょう。
⑤時間をあけず伝える
原則として、行動をやめさせた時に
「なぜダメなのか」
を伝えるのがお子さまにとって分かりやすく、効果的です。
ただし、周囲に人やお友だちがいる前などで伝えるのはお子さまの気持ちを傷つける恐れがあります。そのような場合は場所を変えて、静かに伝えましょう。
幼稚園に勤めていた時の苦い経験です。
あるお友だち。
ほかのお友だちのお仕事が気になって、その子が持っている教具をさわろうと駆け寄り、ぶつかってしまいました。
こちらはびっくりして思わず、強い口調で
「危ないからダメ!」
すると、周りで見ていたほかのお友だちが、私と同じように強い口調で
「ダメ!」
その子に言うのです。
ハッとしました。
子どもは大人の言ったりすることをよく見ていて、同じようにするのだということを強く実感。
それから、子どもへの伝え方や接し方に注意をはらうようになりました。
声掛けの例
教室では、どんな場合に注意やを声掛けをどのように伝えているか、ご参考までにお伝えしたいと思います。
机の上に乗るなど生活の決まりごとを守らない場合
「机はお仕事をしたり、食事をしたりするところだからおりてください。」
お友だちを押すなど手を出した場合
「危ないから押さないでね。」
教具を投げる、鏡に突き当たるなど危険な行動をした場合
人に当たったら危ないし、自分もけがをするからやめようね。」
迷惑な行為や危険な行為をしかけたら、すぐにとめるようにしています。
そして、してはいけない理由を伝えます。困っている、悲しいといった表情で感情を伝えながら、冷静に伝えるように心がけています。
行動が変わる時
フィオーレコース(母子分離2歳児)のレッスンでは、帰る前にみんなで集まり、先生に絵本を読んでもらいます。
先日のレッスン。
あるお友だちが絵本を近くで見ようと前に飛び出しました。
座っていた他のお友だちに思わず衝突。
相手のお友だちはびっくりして泣いてしまいました。
「前に出て絵本を見たい気持ちはわかるけれど、みんなが見えるように座ってみてくださいね。」
と伝え、ごめんなさいもしました。
次のレッスンで絵本を読む時間がまた来ました。
そのお友だち。
今日は座っています。
最後まできちんと座り、みんなといっしょに絵本を見ることができました。
「上手に見てくれてありがとう。先生はうれしかったわ。」
と伝えました。
帰り際にお母さまからこんなお話をいただきました。
先週、お友だちにぶつかって泣かせてしまったことがショックだったのか、
「おともだちにぶつかったら、ないたの・・・」
と何度も、話していました。
本人なりに心にとめて、今日、みんなとお話を聞くことができてよかったと思います。
お友だちは2歳になったばかりで、自分の気持ちがどうしても先にでてしまいがちです。
言われたことを理解して、みんなで気持ちよく過ごすための方法に気づくことができたのにはびっくりしました。
相手に受け入れられるようにきちんと伝えることが大切だということをあらためて学ばせていただきました。
お子様の気持ちをくみ取る
モノを投げる、よじ登るなど体を発達させようとしたり、自我が芽生えて自己主張をし始める1歳から2歳後半まではこうした行動が出がちです。
3歳からは自我が確立し始め、好き嫌いといった好みも明確になる中、自分のコントロールがうまくできずに衝動的な行動をとってしまう場合もあります。
止めさせるだけでなく、そのもとにある欲求や気持ちをくみ取るとともに、ふさわしいお仕事や活動に向けて、発達を促すようにしています。