1歳児クラス(ステッラコース)のお母さま方から
- トレイにおもちゃを載せたら、自分でお片付けができました
- 手洗いを自分から進んでしています
- 食事の時に、手を合わせて「いただきます」をするようになりました
とのご報告をいただきました。
教室での活動が定着して、嬉しさいっぱいです。
お子様の成長する力、吸収する力は、本当に素晴らしいですね。
また、こんな質問も頂きました。
- 子供が興味のあることに集中して関わることができるように、家庭でどのような環境をつくったらよいのですか?
モンテッソーリ教育では、
- お子様の成長には環境が大切
- 大人の役割は環境を整えること
と考えています。
ご家庭での環境づくりについて、お伝えさせていただきたいと思います。
家庭での環境づくり
家庭での環境には、部屋や家具、日常生活の道具、玩具といった「物的環境」と、お母さまやお父様など「人的環境」のふたつがあります。
手を洗うことに興味を示すようになった場合について、考えてみたいと思います。
物的環境の整え方
手を洗う場所として、洗面所を選んでみました。
- 階段や、踏み台を用意する
- 濡れてもよいようにスモッグを着る
- 手を洗うための洗面器を用意する
- 石鹸を小さく切る
- 蛇口に手が届かないならウオーターガイドを取り付ける
- 手ふきを子どもの手の届くところに掛ける
- 床拭きや床に敷物を敷き水もれの手当てをしておく
こういったことが考えられます。
家庭の環境は大人のサイズが中心。子供が自分でできるように環境を整えてあげることがポイントです。
人的環境の整え方
- 手の洗い方をゆっくりと手本を示す(大人の8倍のテンポでゆっくりと)
- できないところを手助けする
- 集中できるように見守る
大人の役割は、活動を示し、ロールモデルになる、物的環境とお子様の活動をつなぐように努めることがポイントです。
観察から見分ける子供の興味
お子様が日々成長される中で、興味を持つ活動はいろいろと変わっていきます。
興味を持つ活動を繰り返し行う中で、集中現象が生まれ、お子様の成長が引き出されます。
今、お子様が興味を持っている活動を見分けるには、子どもを観察することが大切です。
- 蟻の行列を見る
- 砂を触る
これも大切な興味を持つ活動のひとつです。
先日、あるお子様がレッスンで、玉を何回も床に落としていました。
- 投げてみたい(腕や手を使いたい)
- 落ちた時の音を聴きたい
- 転がるかどうか試したい
などいろいろな興味が考えられます。
投げることに興味があるようでしたら、
- 投げても良いところで投げさせる(人のいるところは危ないので)
- 投げて危なくないものを準備してみる(柔らかいもの)
- 段ボールなどに投げ入れて遊ぶように準備する
といった環境の整え方が考えられます。
いろいろ試して、何が楽しいのか確認してみてくだい。
子供の成長を育む環境
植物や動物などの生命は、空気や土、水分、太陽、場所などの環境が、生命を育んでいます。
人間の場合は、食物や光、空気、場所といった自然だけでなく、知性や道徳、社会性や宗教など文化的要素が加わった環境で、環境を自らつくりながら活動。
それぞれに適した環境が、生命の生き生きとした活動を引き出しています。
人間の場合に注意が必要な点は、6歳までの子どもと大人では適切な環境が異なることです。
大人の環境は6歳までの子どもにとってサイズもテンポもかけ離れすぎているため、大人に助けてもらう必要があります。
子どもが大人に依存している限り、本来の成長を遂げることはできません。
子どもが自分の生活を指揮し、自分で自分を教え、鍛えるなど、自分の力を意識するような場所がない限り、子どもは大人から独立することができないのです。
そこでモンテッソーリは、子どもが自分で自分の生活ができるように、6歳までの発達の特徴である敏感期や吸収精神を有効に活用した子どものための特別な環境を用意しました。
この環境は「整えられた環境」と呼ばれています。
大人が、その時期に必要な刺激や限界を備えた状況を配慮することで、子どもは成長に向けたエネルギーを正しく発揮し、自分の全能力を正常に伸ばすことができます。
「整えられた環境」では、次のような要素が大切です。
①子どものリズムとテンポが充分に発揮できる場
子どもと大人の代謝速度は非常に異なるため、大人と子どもの感じ方は大きく違っています。
子どもは、自分特有のペースでゆっくりと運動をしながら、大人には考えも及ばない多くのことを自分なりに獲得しているのです。
⓶安心感を与える雰囲気
人間の子どもは,他の動物に比べてか弱い存在です。
物理的な危険などから守られて、子どもが安心感を持つ必要があります。
「大丈夫!」 という優しいまなざしが、自由な活動を後押しします。
③活動を可能にする場所や道具
子どもの心は,運動、特に手の運動と結びついて発達します。
- 集める
- バラバラにする
- 動かす
- 回す
- 置き換える
など、手を使って一生懸命に活動し続けることができる道具と場が必要です。
④美しさ
子どもは,美しいものに魅力を感じ、活動意欲が強く起こります。
色や形など取りまく品物すべてが美しく,魅力的なことが大切です。
⑤制限
教材や道具が多すぎると、どれを使ってよいのか迷ったり、集中できる対象物を見つけにくくなります。
余計なものに気を取られて疲れたり散慢になることを防ぐためには、ある程度の制限が必要です。
⑥秩序
2歳をピークに秩序に対する感覚は特別になります。(秩序の敏感期)
子どもの知性は、この秩序を手がかりに区別や比較をしながら周辺を肉体化するため、秩序がなければ全てが混乱し,方向を失ってしまいます。
秩序が、「整えられた環境」の中の「どの部分にも、全面的に、完全な姿で浸透している」ことが大切です。
⑦文化全体につながっていること
大人が作り上げている文化の世界にまでつながった秩序が「整えられた環境」のそれぞれに備わっていることが必要です。
こうした環境での活動が、子どもを「現実」の「正確」な「仕事」に向かわせ、子どもが「本物の責任」を伴う「本物の活動」をすることを可能にします。
大人から独立して自分の世界に本気で専念することができた子どもは、次の段階で、本気で大人の世界に取り組むことができます。
お子様の目線に合わせ、どうしたら活動しやすいのか配慮することで、お子様は自分で活動できることが増え、成長が加速します。
家事や育児で、時間や精神的な余裕が持ちにくいことと思います。
お子様の一番長く過ごすご家庭で、あせらずに、少しずつ環境を整えていっていただければと思います。